海のなかに
誰も知らない私だけの海がある
海の中に私の王国がある
そこには誰もいない
私もいない
冷たい海流に閉ざされた
水底にひっそりと佇む塔を
私はいつも思い描いてみる

海の中に私の王国がある
そこには誰もいない
私もいない
冷たい海流に閉ざされた
水底にひっそりと佇む塔を
私はいつも思い描いてみる

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桜貝
桜貝は爪によく似てる。
少女の艶々した、優しいピンク色の爪。
片腕を取り替える川端の小説みたいに、
一日だけ桜貝を爪にすることができたらいいのにな。
脆い壊れやすい爪だから、その日は何もしないで過ごそう。
古い音楽でも聴きながら、ゆっくり時が流れるのを感じたら
いつしか昔の自分に戻っているかもしれない。
下の名前も忘れてしまった男の子と
暖かい海で桜貝を拾った頃の自分に。
いえ、昔の私に戻りたいとは思わない。
でももう一度あの頃の気持ちになって確かめてみたいこと。
あの日の海の潮の香りも、こんなに苦かったかしらと。

少女の艶々した、優しいピンク色の爪。
片腕を取り替える川端の小説みたいに、
一日だけ桜貝を爪にすることができたらいいのにな。
脆い壊れやすい爪だから、その日は何もしないで過ごそう。
古い音楽でも聴きながら、ゆっくり時が流れるのを感じたら
いつしか昔の自分に戻っているかもしれない。
下の名前も忘れてしまった男の子と
暖かい海で桜貝を拾った頃の自分に。
いえ、昔の私に戻りたいとは思わない。
でももう一度あの頃の気持ちになって確かめてみたいこと。
あの日の海の潮の香りも、こんなに苦かったかしらと。

きらきらビーズ
きらきらビーズ 光ってきれい
きらきら きらきら
そのきらめきはとりとめがなく
そのかがやきはわたしを傷つける
もっとわたしを傷つけて
もっとわたしを苦しめて
きらきらビーズ きらきら きらきら ・・・
きらきら きらきら
そのきらめきはとりとめがなく
そのかがやきはわたしを傷つける
もっとわたしを傷つけて
もっとわたしを苦しめて
きらきらビーズ きらきら きらきら ・・・
ボートで

私は小さなボートでたったひとり
暗い水面に漕ぎ出した
はるかかなたから聴こえる
かすかな声にむかって
その声は とてもかすかだけれど
聴いたことがあるようで 懐かしくて
もしかしたらあなたの声?
私が生まれる前に
あんなにも
近く 温かく
強く感じていた ひかりの中のあなた
いくら漕いでも 果てしなく水は続き
静寂だけが私を取り囲む
胸は動悸して 目は涙でかすんだ
あなたの声は近くならない
オールからこぼれる水はきらきらと散って
水中に微光を放つ小さな虫になった
涙は水面に落ち 銀の魚になった
ボートの後ろには たくさんの小さな生き物が生まれた
でも私は暗い水面を進むだけ
あなたの声だけを追って
漕ぎ続けている
いつまでも
いつまでも…
+++++++
味戸ケイコさんの絵のイメージで書いてみました。
第一画集「かなしいひかり」の復刊を目指しています。
復刊ドットコム