ボートで

20040811_1070171.jpg

私は小さなボートでたったひとり 
暗い水面に漕ぎ出した
はるかかなたから聴こえる 
かすかな声にむかって

その声は とてもかすかだけれど
聴いたことがあるようで 懐かしくて
もしかしたらあなたの声?
私が生まれる前に 
あんなにも
近く 温かく
強く感じていた ひかりの中のあなた

いくら漕いでも 果てしなく水は続き
静寂だけが私を取り囲む
胸は動悸して 目は涙でかすんだ
あなたの声は近くならない

オールからこぼれる水はきらきらと散って
水中に微光を放つ小さな虫になった
涙は水面に落ち 銀の魚になった
ボートの後ろには たくさんの小さな生き物が生まれた

でも私は暗い水面を進むだけ
あなたの声だけを追って
漕ぎ続けている 
いつまでも 
いつまでも…


+++++++

味戸ケイコさんの絵のイメージで書いてみました。
第一画集「かなしいひかり」の復刊を目指しています。
復刊ドットコム
スポンサーサイト



ガマの穂



こないだ田舎道でガマの穂を見かけて、それで思い出したこと。

小さい時に因幡の白兎の絵本を読んで、ガマの穂にいたく興味を持った。
毛をむしられたウサギがガマの穂の上を転がったら元にもどったというので、
ガマの穂っていったいどういうものなんだろう?と。
町の子だったのでガマの穂なんて見たことがない。
絵本の挿絵でもその辺はっきりとは描いていなかった。

あるとき夏休みに家族で田舎に行って、初めてガマの穂を見た。
「あれがそうだよ」と言われて見たそれは背が高くて
茶色いがさがさした長いロール状のモノが突っ立ってる変な草だった。
何よりもまず「焦げたアメリカンドッグみたい」と思った。
あのアメリカンドッグの上をウサギが転がるのか。
一応わかったけど、なんとなく納得がいかなかった。
ふわふわした小さな花みたいな草をイメージしてたのに、なんだかなぁ。

やっと納得がいったのは、さらに数年後のやはり夏休み
自分でガマの穂を採って茶色のロールを割ってみた時だった。
中に白い細かい繊維がぎっしり詰まっていたのだ。
なーるほど!この白い毛がうさぎについて、そのまま治ってしまったのね。

すっかりわかって満足したけど、ちょっと疑問が残った。
日本書紀の大国主命は「ガマの穂を割って中の繊維を出して
その上を転がりなさい」なんて詳しく教えてくれてはいない。
子供用のお話になっていても、そこは原文のままただ
ガマの穂をとって上を転がりなさいとなっているだけだ。
なんでガマの穂なのかというあたりを突っ込んで解釈してないし、
挿絵などでもわかりやすく描いてるのは見たことがない。
今もどこかで私のようにギモンを持っている子供がいるのかな。

雨の唄

20040802_1070167.jpg

お山に雨が降りました
あとからあとから降ってきて
ちょろちょろ小川ができました

いたずら熊の子かけてきて
そうっとのぞいて見てました
魚がいるかと見てました

なんにもいないと熊の子はお水をひとくち飲みました
おててですくって飲みました …


静かに雨が降る日にいつも思い出す唄。


雨降りお月さん雲のかげ
お嫁に行くときゃ誰とゆく
ひとりでから笠さしてゆく …


ぽぅっと潤んだような月を見た時口をついて出る唄。
プロフィール

胡舟

Author:胡舟
北海道オホーツクに在住し北の海のクラフトを作っています。

カテゴリー
スポンサードリンク
Arcive
リンク
MOON
CURRENT MOON
検索フォーム