能除一切苦

般若心経の中心思想を体現する「空」という概念。これの解釈が大変に難しい。でもそれが理解できれば、一切の苦しみから解放されるらしい。だからいろいろ調べている。でもなかなかわからない。

夏に能取岬に行ったとき、灯台の公開日だったので一番上まで上ってみた。視界の270度くらいが海で、足元は無論目がくらむような高さ。そこに立って海に向かって手を伸ばし、胸を開いて、目をつぶって湿った風を感じてみた。閉じた瞼の内側に海を感じる。意識が風に解けてほぐれてゆき、とても自由になっていく気がする。自分の意識が、この場所から岬全体に、天空に広がっていくような感覚。そして体の感覚はなくなり、意識は風になる。

「空」とは「無辺」ではないだろうか。
私なりに感じたこと。たぶん違っているだろうけど。

人生は別れと悲しみに満ちている。さよならだけが人生、まさに。一切の苦悩から解き放たれるありがたい教えなら、なんとか理解したいと、毎日般若心経を読んでいる。
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有元利夫


「雲のアルルカン」1980年

折に触れて有元利夫の画集を眺める。格調ある静謐な空間、落ち着いた深い色の階調に、心が静められていく気持ちがする。とりわけ色の美しさに惹かれる。温かな、繊細な、気品のある色。

出会いがいつだったのか、大学生か、あるいは社会人になりたての頃だったかも。おそらく逝去されて間もない頃ではないかと思う。当時回顧展が多く開かれただろうし、何気なく立ち寄った画廊でリトグラフや小品を目にする機会も多かった気がする。


「光る箱」1982年

有元さんの絵に登場する、いくつかのモチーフが好きだ。たとえば上の絵で、放射する線の束として表された、光のモチーフ。昔の仮面劇でも催されそうな古い舞台。音符みたいに空間に軽やかに浮かぶ赤い玉。アンティークの書割のような雲。はらはらと落ちる花びら。どれもそっとそこにあって、大げさに主張するのではないけど、重要な脇役みたいなモノたち。
人物(ほとんどが女性)もモノたちも色も、画面の中のすべてが心地よい調和と諧調を保ち、低い旋律を奏でている。古い心地の良い部屋でリュートかなにかの古楽曲を聴いているような感じ。穏やかだけど気品と威厳のある昔風の老婦人のような。心地よく懐かしい、ちょっと遠くなった記憶のような感覚。

享年38歳。この典雅な音楽的な世界が新しい展開をするとしたら、どんな風になっていったのだろう。画集をめくりながらいつも考える。

石田徹也

ここ一月ほど病気の猫の世話に明け暮れる日々。制作もWEBもままならない。
朝は猫に6時くらいに起こされる。今朝もボーとした頭で日曜美術館を見てたら石田徹也を特集していた。初めて知る画家だけど、衝撃的だった。一見して心をつかまれてしまった。

昨年31歳の若さで亡くなったそうだ。露出しはじめたのは追悼展や遺作集が出た後のことらしく、今後どんどん評価が高まっていくのだろう。まだWEB上にも作品はほとんど出ていない。画像は載せられなかった。

作品を見ながら、ふと丸木位里・俊の被爆画を思い出した。私たちはすべて”現代生活”というものの”被爆者”なのかもしれず、石田がそれを自らの痛みと引き換えにして描いてくれたのかもしれない、と思った。

クラッシュ

パソコンに向かうとき座る椅子の背がガタガタしてとれかかっていた。だましだまし座ってたけど、つい忘れてぐっと寄りかかったら、がたんと外れてしまった。すぐさま作業場からドリルとボルトナットを持ち出し、ギュルルーンと穴を開けて2箇所ナット留めして修理完了。「私ってこの手の作業は慣れてるから手際がいいよなぁ~」と自己満足に浸り、さて続きと思ってモニタを見たら、あら真っ黒。なんと椅子修理の間にPCが逝ってしまったのだった。先月下旬のことだ。

それから10日余りはバタバタだった。HDDを取り出して夫のパソにケーブルで繋ぐやら、ファイルの取り出しに失敗してインデックス情報を壊してしまうやら、仕方なくデータサルベージの業者に頼むやら。一方ですばやく中古マシンをオークションで落とし、サイトチェックは夫のPCを間借りしてやっていた。サイトトップでお知らせしていたにもかかわらずなぜか注文が入り、古いバックアップから慌ててメールのテンプレを探し出したりして。でもまぁ夫のマシンがあったおかげで、さほど慌てなくて済んではいたけど。

クラッシュは2度目、オクで購入したマシン(本体のみ)は3代目になる。夫の機も入れて通算4機目だ。さすがにPCに対する考え方も変わってきた。おそらく今後もずっと私も夫もコンピュータから離れない生活だろうし、この先まだたくさんの機種を取り替えていくことだろう。PCなんてテレビや洗濯機や冷蔵庫に比べて実に壊れやすいし、あっという間に時代遅れになってしまう。そう考えたら、程度のいい中古を使い継いでいくのが一番経済的な気がする。

そんなわけでオークションで落とした真っ黒な機体は元からの白いモニタとちぐはぐだけど、音が静かだしまぁいいかなと思っている。以前は「クールでスタイリッシュで家電メーカーなんかのじゃないやつ」なんて、見かけにこだわって探したりしてたんだけどね。とりあえず救出されたデータを読み出すのにDVD-Rが必要なので、せっせとオークションを漁っているのだった。
プロフィール

胡舟

Author:胡舟
北海道オホーツクに在住し北の海のクラフトを作っています。

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