ジャガイモの花

「北海道の人はジャガイモの種類を最低10種類は言える」どこかのご当地系サイトに書いてあったけど、本当なんだろうか?
こちらでは実際ジャガイモの色々な品種を目にする。普通のスーパーでは男爵とメークインくらいしか置いてないけど、農協の店とか物産館は種類が豊富。甘くてホクホクした北あかり(大好物!)、煮込むと半透明になる赤紫のアンデス。ホッカイコガネは揚げ物向きだそうだけど、揚げ物で使ったことがない。大きな袋に入った紅丸の種芋もよく見かける。これはでんぷん(=片栗粉)専用だ。
北海道のジャガイモは美味しい。包丁を入れると、鮮度のいいリンゴを切ったときみたいに切り口に水が浮き出て、たまに蜜入りリンゴみたいに中央が半透明になっていたりする。フランス語でリンゴをpomme(ポンム)、ジャガイモを pomme de terre (ポンム・ド・テール)「大地のリンゴ」と呼ぶのを思い出して、なるほどなぁと感心した。関東には水が染み出るジャガイモなんて一つもなかった。美深とか十勝では独自ブランドのジャガイモが生産されているそうだ。ブランドおジャガ!いかに美味しからまし。これらは贈答用などとしてほとんどが都会に出荷されるから、同じ道内といえども簡単にはお目にかかれない。

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ところで私はジャガイモの花も好き。7月半ば見渡す限りのジャガイモ畑が満開になると、北の夏も最盛期だなぁという感慨が沸く。ジャガイモの花は大方白かピンクかと思っていたら、様々な色があることも知った。ピンクはごく薄いのから赤に近い濃い色や赤紫もある。純白、淡黄色、藤色、濃い紫。中心に向かって桃色にぼかしの入る、思わず見とれてしまうような美しい花も見たことがある。農家が一度に何品種かテスト栽培するため、一列ごとに色の異なる花畑になった様子は見事だ。一昨年は青みの強い藤色の花を近所の農地で見つけた。テスト栽培中と立て札が立ったその花は、清楚な風情のある青だった。(上と下の写真がそれ。)このサイトにある「インカのめざめ」という品種もうっとりするような青花だ。そのうち私の青い花コレクションにジャガイモの花が加わる日も近いかもしれない。

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野又穣の架空建築

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例えば廃墟のようなセメント工場とか、青空に唐突に聳えている焼却施設の白い煙突とか、最新式の風力発電機とかを見ると、なぜか現実離れのしてるような、奇妙な感覚にとらわれる。野又穣の描く架空建築はそれをうんと増幅させたような、シュールな不思議世界だ。

昔立ち寄った西武池袋のギャラリーで、入り口のポスターに惹かれて何気なく入ってみたのが野又穣との出会いだった。こちらのプロフィールで見ると93年に西武池袋で「NOWHERE~世界の外に立つ世界」開催とあるので、この頃かもしれない。観たとたんビビッときた。それから何度か都内で作品展を観た。

不思議なのにどこかで見たことがあるような気がするのは、野又さんの建築物が実際に見たことがありそうなパーツで構成されているからだと思う。バルーンや煙突、プロペラなどはとてもリアルだし、コンクリートの感じや錆びた鉄骨の感じとかも、実際ブツがそこにありそうなまでにリアル。でも良く見ると微妙に”野又的”不思議な形態で、そこにやられてしまうのだ。曖昧なところが無く徹底的に描きこまれている故に存在感がある。幻想的だけど夢幻的じゃない。地上のどこかに本当にこんな建築が存在していてもおかしくなさそう。「イバラード」を擁する井上直久とはある意味好対照かもしれない。イバラードの世界観も惹かれるけど、点描みたいな描き方が目がチラチラするようでもうひとつ入り込めない。私はこういうカッチリと描き込まれた、造形的な、乾いた空気感のある不可思議さがとても好きだ。

一度同じ西武池袋のギャラリーでご本人をお見かけしたことがある。白いシャツに黒いパンツ(おそらくデザイナーもの)で黒ぶちメガネ、ザ・アーチストという雰囲気(ごめんなさい 笑)で、その時ギャラリーは私ひとりだったけど、チラ見しただけで話しかけたりできなかった。上のサイトの写真を拝見してて当時の雰囲気を思い出した。

日本の灯台



「日本の灯台 The Lighthouses of Japan」 山崎猛 写真集

昨夏能取岬に行った時にたまたま灯台の公開日で、入り口のところにテーブルを持ち出してこの写真集が展示してあった。その時は気がつかなかったけど、今日図書館でよく見たら表紙が能取岬灯台ではないか!だから展示してあったのね。それにしてもこの表紙写真は素晴らしい。流氷迫る岬、厳しい自然の中に神々しいばかりに立つ灯台の存在感が圧倒的だ。

撮影者の山崎猛氏は1937年北海道に生まれ育ち、現在も斜里にお住まいの由。写真集には日本中の名灯台が多数収められているが、山崎氏が強い思い入れをお持ちなのはやはり北海道オホーツクの灯台、特に能取岬灯台だそうで、写真集のトップを切って11ページにわたり四季折々の能取の写真が飾られている。能取岬と灯台をこよなく愛する私としても、誇らしいような嬉しさだ。その能取岬灯台に寄せられた山崎氏の文章が感動的なので、ここに写させていただく。
「オホーツク海に宇宙の神が舞い降りて、座る大地としては能取岬が最も相応しい。これほど四季に自然を謳い、華麗な色彩で宙と大地と海が見事に調和する岬を私は他に知らない。夏のオホーツクブルーの海面に、冬の流氷に閉ざされた海に向かい合い、指揮者のように立つ灯台に季節の喝采が降り注ぐ。この岬にはヴィヴァルディの協奏曲集『四季』作品8がよく似合う。冬から春へ、朝から夜へ、終わりのない響きが岬を包み遊んでいる。全国に点在する『日本の灯台』のプロローグとして、能取岬灯台の四季折々、千変万化の表情をここに紹介する。」
能取岬の魅力を完璧に伝える思いのこもった一文。私も折に触れて何度も訪れているけれど、写真によって初めて気づかされた魅力的な表情がいくつもあった。先日行ったばかりだけど、また行きたくなった。

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もちろん能取岬だけでなく、おそらく海上保安庁の人しか近づけないような場所にある灯台も航空写真を駆使して撮っていたり、同じポイントで季節を変えて写したり、貴重な記録だと思う。日本の海辺が様々に奥深い豊かな表情を持っていることに気づかされる。2万円と高価だけれども逆に安直に出来ていないのが良い。いつか所蔵したい写真集。

GROTTA DEL ISOLA BELLA

その小島は入り江から切り離されて 静かに海中に佇み
芳しいオリーブ色の潮風と エメラルドの色した水に守られていた
浜辺から見る姿は巨大な鯨か さながら大きな船のように見えた

島の海原に向いた側の崖には 洞窟があった
洞窟は言い伝えを持っていた
昔 人の世を厭うた貴人が小島に移り住み
洞窟に女神を祀ったのだという
住む人が絶えた今も女神は洞窟に居まし続け
夜と昼が溶け合う薄明の時にだけ 切なる願いをお聞きになると

黄昏の太陽が石榴色に空を染め 
その輝かしい色が次第に紫に溶けゆく宵闇のころ
一艘の小舟が入り江を離れ 小島へと静かに進む
うち乗るはヴェールに面を隠したうら若い乙女
そっと洞窟の入り口に小舟を繋いで 岩にあがる
素足を波に洗わせながら 蝋燭を手にして
洞窟の奥へ歩みを進める
緊張と秘めた想いとで その目は火のように燃えていた

やがて奥に行き着くと 薄闇の中に祭壇が浮かび上がった
仄かな光を受けてきらめく 水晶に柘榴石 瑪瑙や真珠
貝殻と珊瑚とで飾った台座の中央に立てるは月の女神の像
乙女は膝を落とし じっと長い祈りを捧げた
やがて厳かな声が彼女の胸に染み込んできた

 「あなたの目が見たものを信じてはいけない
  目を閉じなさい その暗闇の中に真実を見るのです」

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北の海のクラフトを作っています 胡舟クラフト
プロフィール

胡舟

Author:胡舟
北海道オホーツクに在住し北の海のクラフトを作っています。

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