赤い実

9月も半ば過ぎ朝晩はストーブをつけるようになると、庭に可愛い赤い実が増えてくる。

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これはドイツスズランの実。
今の家に越してきた年の春、駐車場脇につんつんとんがった芽がたくさん出てきて、ギボシか何かかと思いとっぱらって花でも植えようとずんずん引き抜いてしまった。少ししたらスズランが咲き出したので、慌てて保護政策に切り替えた。幸い丈夫な草でそれからは年々増えて、春にはいい匂いの花を、秋には可憐な赤い実をつけてくれる。もちろん猛毒だから間違っても口に入れたりしてはいけない。スズランの花は名前の通り鈴のような雰囲気だけど、実になっても振るとチリリンと小さな音を立てそうな、そんなイメージを持っている。


これはエゾノコリンゴの実。
さくらんぼくらいの大きさの真っ赤な実はツヤツヤしてとても美しい。毎年実るわけではなく少ししかならない年と鈴生りの年とあって、6月に咲く白い花のつき具合でその年の「豊作度」がわかる。去年は少しだけだったけど今年はたくさん実った。これから寒くなるに従って赤みが増して見事になる。あまりきれいな実なので、果実酒にしてみたりジャムにしてみたりいろいろ試したけど、渋くてえぐくて不味くて、どうやっても食べられないことがわかった。でも鳥にとっては冬場の貴重な食べ物。雪が積もって餌が見つけにくくなると、冬鳥がかわるがわるこの木にやってくる。ウソなど冬しか見られないきれいな鳥も来て、観察していると楽しい。春になる頃には実はほとんど残らない。
エゾノコリンゴの枝もワイン色がかって艶があってきれい。若いしなやかな枝で以前リースを作ったら、洒落た雰囲気に出来た。でも小枝がトゲ状に尖っていて固いので、剪定の時は怪我しないよう注意が要る。樹勢が強く枝はどんどん繁る。うちの大木もそろそろ刈り込まないといけないけど、鳥たちのために春まではこのままにしておくつもり。コリンゴが赤くなるとナナとする「コリンゴ遊び」は、真っ赤な実をコロコロ転がしてやるとナナが興奮して追っかけていく。それを毎日やるので、秋はうちの駐車場にナナが転がしたコリンゴがあっちこっちに転がっている。

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これはアスパラガスの実。
北海道の代表的な農産物アスパラガス。普通の家の庭先にもよくアスパラが植わっている。うちの庭にもある。植えてあるというより、あちこちから勝手に生えてくる。ちょうど食べごろの芽に出くわしたときは、遠慮なくぽきんと折り取ってシャツの袖で軽く拭いて、その場で食べる。みずみずしくてとても美味しい。
アスパラは雌雄異株で、釣鐘型の薄黄緑色の花をつける株と、赤いツヤツヤした実をつける株がある。元々は観賞用として入ってきた植物だそうで、確かにけぶるような繊細な葉に薄緑の小花をつけた初夏の姿も、秋に赤い実をいっぱいにつけた姿もとても愛らしい。繊細な葉は寒くなると金褐色に黄葉し、実は冬中赤いまま残る。雪の白にアスパラがぽつぽつ赤い点を打っている景色が好きで、実のついた株は添え木をして大事にしている。まるきり放任なのに毎年律儀に芽を出して、1メートル余りにも成長するタフさなど、魅力の多い植物だと思う。
我が家の門前が通りに接する場所に、毎年太いアスパラが何本か出る。それが最初の数年は芽が出たと思うと翌日折り取られていたりした。何度も続いたので決心し「アスパラを盗むな!」と書いたブロック片を置き、さらに先端を削った枝をぐるりと株を囲むように差しておいたら効果覿面w。以来うちの門前には実をたくさんつけた立派なアスパラがにょっきり生えていることとなった。

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これはイチイの実。
北海道では一般にオンコの名で呼ばれている。(オンコはアイヌ語由来のように言われているが、確かではないらしい。)この木も実をよくつける年とほとんど生らない年とある。イチイは関東にもあったけど、北海道の気候に適しているのかこちらでは大木をよく目にするし、どこの庭にもある木だ。うちにも何本もある。実は液果で口に含んで噛むと甘酸っぱい。ただし黒い種は毒があるので飲んではいけない。鳥たちにも人気で、冬が本格化する前に無くなってしまう。同じ赤い実でもコリンゴやナナカマドのようにパッと目を惹く派手さはないけれど、木の静かな佇まいに釣り合った、透明感のある「結ばれた実」という感じがする。葉の濃い緑に少し甘い赤色も良く似合う。強く主張するわけではないけれど、丈夫で寒さに強く一年中濃い緑の葉陰をつくるオンコの木は、北海道の人にとりわけ親しまれている木だ。私は雨の日のオンコの木が気に入ってる。細い葉の一枚一枚がしずくの飾りをつけてとても綺麗だ。

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これはハマナスの実。
海岸の砂地に自生して芳香を放つ鮮やかな花は、夏の原生花園の主役。花期が長く、初夏から9月終わりくらいまで花をつける。だから早いものは夏前から実をつけている。盛夏には花も実もいっぱいにつけて北の海岸を彩る。
うちには無いけどすぐ近くの公園にたくさんある。これは夏に撮った写真で葉が緑色だけど、秋が深まるにつれて葉が黄色くなってくる。オレンジ色がかったミニトマトを思わせる実は夏に固く締まっていたのが、秋にはすっかり熟して柔らかくじゅくじゅくした感じになる。以前はこの時期に公園の熟したハマナスの実を取って来て果実酒に漬けていた。ハマナスの果実酒はトロリと自然のとろみがついて甘みが強く、酸味はほとんど無いのでそのまま飲むとジャムシロップみたいな感じ。お菓子作りに使ったり出来るかもしれない。ビタミンCを豊富に含んでいるそうで(レモンの20倍らしい)、美白ブームで注目されたりしているようだ。

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これはナナカマドの実。
イチイやコリンゴと同じく実をいっぱいにつけるのは数年おき。丈夫な木でうちの庭でも雑草のように勝手に生えてくる(鳥が運んでくる?)。この実でも果実酒を作ってみたけど、渋いだけでまったく飲めたものではなかった。でも鳥は食べている、不思議だ。よく街路樹にもなっているけれど、街路樹には向かないのか下枝が枯れている木が多い気がする。大木に育つと自然に樹形が整い、バラ科特有の艶のある木肌に独特の箒のような末広がりの美しい樹姿になる。以前うちの前の通りにすごい大木のナナカマドがあって、実をつけた姿は壮観だったのに、ある年大風で枝が折れてしまい、しばらく経って根元から切り倒されてしまった。とっても残念。
ナナカマドの木の下を通ると、房状になったままの実がよく落ちている。鳥が落とすのか理由はわからないけど、そういうのを見つけるとつい拾って行かずにはいられない。ナナカマドは軸の部分も赤く、赤い房に真紅の実がついてる様子が趣がある。葉も(天候の良い年なら)燃えるような紅に紅葉するので、木が丸ごと真っ赤に燃えているみたいに見える。今の時期はちょうど紅葉が始まりかけていて、枝先の葉から薄赤く色づいて枝元に近い葉はまだ緑のまま、実はもう真っ赤になっている。移りゆく季節を映したようなそんな姿も、繊細な美しさが感じられて好もしい。
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島尾敏雄の「夢日記」「記夢志」、つげ義春の夢日記とか、夢を記した文章を読むのが好きだ。作家の見る夢ってやはりイメージ豊かだと思うし、ストーリーとまでいえないでも、なんとなく展開らしきものがあるのも面白い。
自分の見た夢を克明に記録できたり、夢の続きを見ることができたり、逢いたい人に自由に逢えたり、空を飛んだり動物になったりとファンタジックでストーリー性豊かな夢を見たり。そういう人の話を聞くととても羨ましい。私の見る夢はまったく散文的というかまとまりがないというか、場面の羅列だけみたい感じなのだ。ストーリーらしきものはほとんど無い気がする。例えば知らない土地へ行く列車に乗っていて、窓の外に次々と現れては流れていく風景を見ているみたいな感じ。自分の夢に自分が参加しているという感覚が希薄。このことに気づいてから、夢に対して寂しさというか、かすかな空虚さを感じるようになった。常に傍観者、まさに我が人生がそうだけど、夢の中でまでそうなのかと思って。寝つきが悪く深い眠りになかなか入れない体質が関係してるのかもしれないけど。どうせなら夢は実人生の補完であればどんなにいいだろう。好きな夢を見られる薬が出来たらいいのにと本気で考えているのだけど、だれか研究開発してくれないだろうか?…
それから、知っている人や場所が出てきても、夢の中のそれらは現実と似ても似つかないものだったりする。これは私だけではないのだろうか?よく近しい人がなくなって夢で逢えたなどと聞くと、それは生きていた時と変わりないその人だったのかどうか、聞いてみたい気がする。私は例えばクマの夢を見られたとしても(それはたいがいほんの一瞬なのだけど)クマとはだいぶ様子の違った猫で、ただ夢の中でクマだと思っているに過ぎないらしい。目が覚めた後でクマに逢えた気がして嬉しい反面、食い違ったような気分が残る。「ズバリ現実と違わないもの」はかつて夢で見ることが出来たことが無い気がするけど、覚えていないだけなのだろうか。
スピリチュアリズムとかが盛んな昨今、夢についても盛んにいろいろ言われてる。自分にとって有益な夢を見るためにはどうすればよいかとか、その方法やらがあれこれと。そういう本を読んでみたりもしたけど、夢のために環境や心や体調を整えたりなんて勘弁と思った。疲れて倒れるように横になったり呑んだくれて横になっても、眠りはつかの間現実から逃避できる、体も精神も重力から開放される時間。その時間まであくせくコントロールを試みたくはない。街の喧騒を逃れて入った小さな劇場で、どんなプログラムが上映されるのかわからないけれど席に着いてゆったりと待つみたいでいたい。そんな時夢は彼方から訪れてきて欲しいのだ。私の意識の及ばない世界から。

紫檀のストラップ、黒檀のキーホルダー

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左:「紫檀に青貝インレイのストラップ」 右:「黒檀と金属パーツのキーホルダー」。
紫檀の方は、流行中のクロスモチーフをイメージした。象嵌の模様はクロップサークル(=ミステリーサークル)模様をクロス風にアレンジしたもの。
以前からクロップサークルにとても興味があって、いつかクラフトに取り入れてみたいと思っていた。参考にしたのは2006年6月15日フィンランドで発見されたもの。Crop Circle Archiveというサイトでは、世界中で発見されたクロップサークルをデータベースにして掲載している。くらくらするほど膨大な数だ。2007年も各地でたくさん見つかっている。こんなに世界中で発見されていたなんてこのサイトを見るまでは知らなかった。最近は確信犯的人工サークルも多いけれど、明らかに人為的なものは除外しているようだ。
紫檀を使ったのは今回が初めて。黒檀に比べて幾分削りやすいけど、木目に沿って割れやすいのは一緒でやっかいな木。(単に修行が足りないんだけど。)でも色が素敵。臙脂がかった深いワインブラウンで、青貝がよく映る。貝はアバロニ貝というチップになったものを使った。親切な方に以前上質のアワビシートを扱うお店を紹介して頂いたのだけど、作るものが小さいので今のところチップで事足りてしまっている。裏側にもチップを埋め込んだので、サイトの作品ページもぜひチェックしていただければと思う。

黒檀の方はだいぶ時間がかかっている。1年前くらいに手をつけて、こりゃ無理と投げ出してあったのを思い返して再トライし、また投げ出して再開し…形が出来てきた半年前くらいからコツコツ進めるようになって、やっと完成した次第。なぜそんなに時間がかかるかというと、一本の木片から鋸だけで形を切り出したため、そしてヤスリとルーターだけで丸みを削りだしたため。普通はバンドソーか何かでおよその大きさに小割りし、糸鋸盤で原型となる形を切り抜いてから、切削作業に入る。このキーホルダーなら普通はさらに電動轆轤を使えば、あっと言う間に完成形近くまで持っていける。(のだろうと思う。)私はモーターツールは小さなルーター以外持っていない。鋸で切ると水平も垂直も出ないし、曲線なんかは細かく切れ目を入れて鑿で叩き落としてどうにかこうにか原型に近づける。だから複雑な立体をやろうとすれば、スタートラインに立つまでがえらく大変なことになる。そもそも黒檀の方は「こんな形が自分に作れるだろうか?」という動機だけで始めたので、売り物にする頭はなかった。投げ出してる間に数個のストラップを作ったお陰でほんの少しだけ技術がアップしたようで、ほとんど無理だろうと思っていたのがほぼ自分が思い描いていた形に作れそうになってきたので、いっそ商品として仕上げてみた。
目検討でゴリゴリとヤスリで削って丸みをつけていったので、当然正確なシンメトリーではなく、見る方向によってちょいといびつだったりする。でも手に握るとまろく馴染む感じになっている。ストラップを作るとき密かにこだわっているのは、一番に手触り。大きさ、形、丸み、カーブ、木肌が手の中でしっくりくるかどうか。見た目の正確さより私はそういう要素の方が気になるのだ。
黒檀以外の素材はステンレス板、丸玉ピン、金属鋲。黒檀は金属と相性が良く、ことにシルバーは相性抜群なので、いつかシルバーも使ってみたいと思っている。

創作クラフトとアクセサリー 胡舟クラフト

浮き玉ガラスのカケラのネックレス

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新作「浮き玉ガラスのカケラのネックレス」。
厚みのあるガラス片をはつり、雰囲気を出してから穴をあけてネックレスにしました。鋭い角は全て丁寧にヤスリをかけ、直接肌に触れても問題無い状態にしてあります。

「はつる」とは削ること。石などの硬いものをタガネではつるなどと使う。ガラスを切断面から専用ハンマーで叩くなどして力を加えると、表面が剥がれて独特の波のような模様の面が出来る。(工房用語で”ハマを入れる”という。ハマはハマグリだそうだ。)ガラスが層状である性質を利用した主にダルモザイクの技法だけど、普通のガラスでも出来る。ただし切断面から叩くのである程度の厚みが必要なのと、ソーダガラスであること。浮き玉の底辺部のガラスはこれに向いている。かなり大きな玉でないと無理だけど。時たま浜で古い浮き玉のカケラが大量に埋め立ててあるのに出くわす。使わなくなって投棄されたのだろう。可哀想だからカケラでもみんな拾ってくる。割れてカケやハマが入って雰囲気の出たカケラは、とても美しいと思う。ハツリは微妙な力加減が必要、どんな模様が出るかわからない、うっかりすると割れてしまうなど緊張する作業だ。(ガラスが飛び散るのもかなり怖い。)「もういっちょ」と叩いたとたん、パッキリ割れて涙涙…も数知れず。止め時の見極めも肝心で、こればかりはやってみないとわからない。

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プロフィール

胡舟

Author:胡舟
北海道オホーツクに在住し北の海のクラフトを作っています。

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