鈴蘭の眠り

子供の頃隣の家に住んでいたユカちゃんはとてもませた子だった。
同い年で小学校も同じだったからよく一緒に遊んだけど、
とろくさい私は彼女の言動についていくのに気後れすることも多かった。
ある日のユカちゃんとの会話。
「もし自殺するならどんな方法が一番楽だと思う?」
「うーん…眠り薬を飲むとか…」
「私はね、もう決めてるの」とユカちゃん。
「北海道に行ってスズランの咲く野原の中でお昼寝するの。」
怪訝そうに私が黙っていると、じれったそうに彼女は言った。
「スズランてね、毒があるんだよ。満開に咲いたスズランの花の中で眠ると
眠ったまま死んでしまうんだから。」
なぜかうっとりと話すユカちゃんをぼんやり眺めながら、
へーそうなんだ…それは楽でいいなと思った。
ユカちゃんの話してたスズランの花が今庭で満開になっている。
その中で昼寝するくらいで死なないのはもうわかってるけど、
スズランが咲くたびになんとなくこの会話を思い出す。