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桜山

関東は今桜が満開らしい。桜といえば洗足池の桜山を懐かしく思い出す。
中学から大学に上がるまで大田区の洗足池のすぐ側に住んでいて、池のある桜山公園が私の部屋の窓から見えた。ふだんはとても静かなところなのに、花見時には大騒ぎになった。日課で犬を散歩させるのが、この時期は嫌だった。耐え難い酒の臭気と酔客の馬鹿騒ぎ、それとあちこちに出現したゴミの小山を尻目に、余すところ無く敷かれたゴザの隙間を縫いながら犬の紐を引っ張って、出来るだけ急いで通り抜けた。
半月ほど経つと花は終わって若葉の季節になる。その頃には花見客もいなくなって、静かになった公園をいつものように散歩できるようになる。桜の若葉の緑陰に染まりながら歩いていると、初夏の爽やかな風がさっと吹いて、ふいに頭上から花吹雪が舞ってきた。すっかり葉桜になったと思ったら、高いところに咲き遅れた一枝が残っていたのだ。気がついて見渡してみると、あちらこちらで花びらがはらり、はらりと若葉の間から落ちていた。もうわずかなそよ風で落ちてしまう花びらは、優しく落ちる雨のしずくみたいにも見えた。
花のあとの赤いしべは、やがて小さな黒い実をたくさん生らせる。それは公園の土の上にぽたぽた落ちて、踏むと濃い赤い汁になった。小鳥が実を食べに集まるので、甘いのかと思って摘み取って口に入れたら、ほっぺがすぼまるほど渋かった。
秋には紅葉も美しく、桜の木は折々に楽しい思い出を作ってくれた。そういえば中学の時は、学校からの帰り道には洗足池公園を通り抜けていた。学校では禁止していたけれど。公園をはさんでちょうど対角線の位置に中学校と私の家があったので、公園を抜けていくのが一番近道だったし、池のアヒルを眺めたり小さな神社に寄り道したり桜の林を通り抜けていくのは、気持ちがほぐれていくようでホッと和めるひと時だった。「どうしてこんな楽しい道を禁止するんだろう」と毎日のように池の脇と桜山を通って帰宅していた。

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プロフィール

胡舟

Author:胡舟
北海道オホーツクに在住し北の海のクラフトを作っています。

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