魔の海

魔の海域「サルガッソ」を衛星で初撮影
Envisat captures first image of Sargassum from space
サルガッソー。その名をまさかYahooで見かけるとは思わなかった。W・H・ホジスン「夜の声」に出てくる、帆船を飲み込む魔の海域だ。
「夜の声」は愛読書のひとつ。魔の海で出会う異形な生物、とうに消え去ったはずの古代の船、奇怪な事件…昏い海で起こるさまざまな不思議に読むたびに魅せられ、波と櫓の音しかしない夜の海原の無限の恐怖を想像した。でもいわゆるバミューダトライアングルとは違って、一世紀前の帆船にとってだけ魔の海域だったのかなとも思っていたので、ホジスンが描写したのと同じく現在でも海草が浮遊する天然の難所であり、今なお小型船舶にとっては脅威の海域であると知って、なぜだかとても満足したのだった。

ちょうど昨日読み終わったロベール・ド・ラ・クロワ「海洋奇譚集」も、たいへんに怖く恐ろしく、興味深い本だった。古くは1880年代から大戦中の1940年頃までの、実際に起こった異常な海難事件の数々を、当時の記録を元にノンフィクション的に再構成している。静かな海で痕跡も残さず消えた最新の船、危機一髪で危険を察知する船長の特殊能力、謎と共に消えた灯台守etc…。実話であるからこそ海の恐怖がいっそう惻々と迫ってくるよう。すごいと思うのは凄まじい恐怖の体験をした後でも、ほとんどの海の男たちが再び海に戻っていくことだ。

ところで子供の頃読んだ、”海の不思議で怖い実話”の中にとても印象的な話があって、鯨に飲み込まれて救助された船乗りが、鯨の体内で色素を溶かされて「体の半分が透明になってしまった」というものだった。子供の時は無邪気に「透明人間ていたんだ!スゲー!!」と思っていたけど、考えてみたら色素が無くなったら白くなるだけで透明にはならないなと、大人になって気がついた。実話だって言われたら子供は信じるよねぇ。。

付記:↑は「マルセイユの透明人間」という有名なエピソードらしい。
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プロフィール

胡舟

Author:胡舟
北海道オホーツクに在住し北の海のクラフトを作っています。

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