紫蘇の実をとりながら
紫蘇の実を採っていたらまど・みちおさんの詩を思い出した。
「おどろいてしまった 立ちがれたシソのくきを 切りとってみたら 切り口が四角なのだ まるではなくて …」 「こんな所に四角がかくれていたのか!」
世界は不可思議さと慄きに満ちている。それはすぐそこにあるのに、私たちにはなかなか見えない。胎児の鼓動を聴くように、足を止め息をころして、別の脈動に合わせなければいけないんだ。すべての感覚を。
低く遠雷が鳴っている。それ以外はとても静か。紫蘇の木のてっぺんにはいつも緑色のヒゲの長い虫がいて、俺の場所だといいたげな顔をしてる。雨が降りそうだよ、と声をかける。
いびつな小惑星のようにせわしなく廻り続ける私たちには、見えていないもの。微かに感じても意識していないもの。それを言葉で留めるのが詩。形に留めるのが芸術。とてつもなく大きなめぐりゆく何かの中に、小さな雪虫のように漂っている私たちであることを思い出させてくれる。束の間この世界の不思議に触れさせてくれる。
紫蘇の実を採りながらこんなことをぼんやり考えた。家に戻ろうとすると、開けた窓から野良猫が飛び出してすっ飛んでいった。
「おどろいてしまった 立ちがれたシソのくきを 切りとってみたら 切り口が四角なのだ まるではなくて …」 「こんな所に四角がかくれていたのか!」
世界は不可思議さと慄きに満ちている。それはすぐそこにあるのに、私たちにはなかなか見えない。胎児の鼓動を聴くように、足を止め息をころして、別の脈動に合わせなければいけないんだ。すべての感覚を。
低く遠雷が鳴っている。それ以外はとても静か。紫蘇の木のてっぺんにはいつも緑色のヒゲの長い虫がいて、俺の場所だといいたげな顔をしてる。雨が降りそうだよ、と声をかける。
いびつな小惑星のようにせわしなく廻り続ける私たちには、見えていないもの。微かに感じても意識していないもの。それを言葉で留めるのが詩。形に留めるのが芸術。とてつもなく大きなめぐりゆく何かの中に、小さな雪虫のように漂っている私たちであることを思い出させてくれる。束の間この世界の不思議に触れさせてくれる。
紫蘇の実を採りながらこんなことをぼんやり考えた。家に戻ろうとすると、開けた窓から野良猫が飛び出してすっ飛んでいった。