SLが町にやってきた

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洞爺湖サミットに北海道メディアがはしゃぐ中でささやかなニュースは埋もれていたのか、石北線に33年ぶりの蒸気機関車が運行するという情報を知ったのは、5月も終わりごろ。私にはサミットなんかよりはるかに重大ニュース。カレンダーに丸をつけて楽しみにした。
6月24日は試運転があり、庭仕事していたら夏風に乗って何度も汽笛が聴こえた。あの汽笛の音くらい体の中がさっぱりとし、気分が清清する音を知らない。
石北線随一の撮影スポットである常紋峠が(けっこう険しい峠で熊が出たり事故の危険があるとのことで)車の乗り入れ禁止&撮影禁止だったため、「ここで撮ろう」と心積もりしていた我が家に近い高架鉄橋は鉄道写真マニア(いわゆる撮り鉄)だらけになり、ガサガサした雰囲気はイヤなのでそこはやめて少し離れた土手の横に車を停め、山を廻って近づいて来そして離れていく機関車を見た。6月28日はその土手で始発の北見から来た機関車を出迎え、留辺蘂駅に着いたところを撮影したあと遠軽駅まで車で追いかけたし、29日は終点北見へ戻る機関車を同じ土手の脇で見送った。手を振ったら機関士さんが手を振りかえしてくれて、特大の汽笛を残していった(下の動画)。なごり惜しくて見えなくなるまで手を振った。家のすぐ近くをSLが通るなんてめったにあることじゃなく、この地に住む幸運をしみじみ感じた。翌30日は帰っていくのか、やはり庭に居るとき一度だけ汽笛が鳴るのを聴いた。まるでさよならを告げるみたいに。あの1週間、楽しかったなぁ(しみじみ)。



どうして蒸気機関車が好きになったのだろうって考えると、鉄が好きだから巨大な生き物みたいでカッコいいから(巨大生物好きな私)とかいろいろだろうけど、多分ノスタルジーに惹かれる自分の性質が、強くSLに惹きつけられるのだろう。考えてみれば蒸気機関車に初めて感動したのは2002年のSL銀河号で、今度の常紋号と同じC11171号だった。

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今回常紋号として走った「C11171号機」は2002年にふるさと銀河線を走ったのと同じ機関車。私に動く蒸気機関車の感動と楽しさを教えてくれた機関車だ。あの時は1週間の運行予定だったけど見に行ったのは1日だけだった。北海道に来てあまり経ってなかったのもあり、てっきり夏の恒例行事だと思って「また来年見よう」と思っていたのだ。甘かった。結局その後運行は無く銀河線は数年後に廃線になってしまった。銀河線の廃止前には嘆願運動が起きたりしたのだが、「動けるSLがあるならあれを時々運行させて目玉にすればいいのにもったいない」などと思っていた。何も判ってなかったわけ、今回調べてみるまでは。
現在道内で動けるSLはC11171と「SLニセコ号」のC11207の2台のみなのだ。C11171号は「SL冬の湿原号」として2000年から毎年1-2月厳寒期の釧網本線において定期運行され、それ以外の時期も道内各地を廻って不定期にイベント運行している。wikipediaによると『171号機は1940年に川崎車両にて製造。1942年から廃車まで北海道を出ることなく過ごしていた。廃車後、標茶町の桜町児童公園にて静態保存されていたが、JR北海道からの要請で苗穂工場にて動態復元がなされた。』99年のNHKの朝ドラ「すずらん」をきっかけに保存してあった蒸気機関車を復活させる機運が起き、C11171は99年SLすずらん号として蘇える。そしてすずらん号の運転終了後も道内各地で不定期運行していたのだった。動かさないSLはあっという間に単なる鉄塊オブジェと化すから、動かしつつメンテしつつ保存していかなくてはならない。何も知らず、時々思い出しては「アレもう錆びちゃって動かないんだろうなー」と思っててゴメンナサイ。働き者だったのね。
それにしても、戦前に作られて廃車から20年以上も経つSLが再び走れるようになるってすごい。C11171は普段は札幌の苗穂工場に鉄の体を休めているらしい。 苗穂工場は高い技術力でJR北海道のほぼ全ての機関車・電車を製造整備する、北海道の鉄道の母のような存在らしい。同工場併設の鉄道技術館にはC11171の復元風景が写真展示してある。

去年丸瀬布の森林鉄道雨宮号にも乗ってみた。小さくて可愛い客車の中は往時のまま保たれていて、のんびりレトロでなかなか良かった。秋の紅葉が見事だというニセコ号にもいつか乗ってみたい。でも一番愛を感じるのはやっぱりC11171。いつかまた北海道のどこかでC11171に会いたいものだ。いつまでも元気で走っていてくれるといいなと思う。

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wikipedia--SLすずらん号
wikipedia--C11171(国鉄C11形蒸気機関車-北海道)
JR北海道苗穂工場
道内の蒸気機関車
プロフィール

胡舟

Author:胡舟
北海道オホーツクに在住し北の海のクラフトを作っています。

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