ベングラー

「ステンドグラスとワイヤーのキャンドルホルダー・CIRCUS HOUSE」
銅版で受け皿を作りステンドグラスのカバーを乗せたキャンドルホルダー。ガラスカバーは持ち上げれば外せる。ワイヤーと自作のガラスビーズで屋根をつけ、受け皿にはメープル材を玉状に削って足をつけた。最初はただの「ステンドグラスとワイヤーのキャンドルホルダー」としていたのを、作品を見てくれた人が「作品の雰囲気をタイトルにしては」アドバイスをくださったのでCIRCUS HOUSE(サーカスハウス)という名前をつけた。(こういうアドバイスは大変ありがたくて感謝です。)

実はリメイク作品。元々は銅版の受け皿とステンドの四角いキャンドルカバーのみで、ワイヤーの屋根のような部分と木製の足は無かった。作ったのは10年ほど前、当時ステンドグラス雑貨を作って販売していたので、試作品として色々作ったうちの1つ。引越しの際に仕舞い込んだまま長いこと忘れてた。今年になって作業場の大整理をしたときに発見し、手を加えて販売しようと考えた。
このキャンドルホルダーに使ったガラスにはちょっとしたエピソードがある。ステンドグラス工房に勤めてた時、使い残りのガラスの切れ端をもらって家で作って練習したいのだけど、破ガラスといえど高級品は皆が欲しいものだから(工房に勤めてた職人さんはほぼ全員がそれぞれ個人作家でもあった)、入社したばかりのぺーぺーはなかなかもらえない。このガラスだけは「それベングラーだから全部持って行っていいよ」と気前よく、というより厄介払いみたいな感じでたくさんくれた。「ベングラー」ってメーカー名みたいだけど、便所ガラス→ベンジョグラスから転じた工房内でのあだ名だった。トイレの窓に入れるような安物の国産ガラスという意味だ。高級なガラスは一枚ずつ手作業で作られるけど、ベングラは工場生産で色数も少ししかない。ぼこぼこした表面テクスチャも言われてみればいかにも大量生産風で風呂場の仕切り戸っぽい。でも私はたくさんもらえて嬉しかったのと、薄い色もなかなか可愛いじゃないかと思った。今風に言うなら安カワって感じ。よし馬鹿にされてるベングラーで可愛いものを作ってやろうと思って、考え出したのがこのキャンドルホルダーだった。薄紫と緑の取り合わせもストライプも気に入ったし、受け皿もただの形じゃつまらないからうんしょうんしょと銅版を切ってユニークさを出した。けれど何かが足りない気がしていた。
今回これをリメイクしようと思った最大の理由は、10年経った今なら”足りないもの”を加えて自分らしい作品として完成させられると思ったからだ。サーカス小屋のような楽しい雰囲気をイメージして完成したキャンドルカバーはかなり反応が良く、リメイクは成功したと思う。

好評につき製作した色違い。ベングラーも残り少なくなったのでこの作品はこれにて販売終了となりました。
創作クラフト--胡舟クラフト