がらくた自慢

通りがかりに車の中から見るだけだったけど。
北見に、大量のガラクタを通りに溢れ出すほどに並べている小さな家があった。全体が錆色のカタマリにしか見えないそれは、大方は灯油か何か鉄の缶であったように思う。その間に小柄なおじいさんがしゃがんでいた。赤茶に染まったランニングを着て、自身がガラクタに同化したような姿でいつも缶の間に埋もれながら一心に何かゴソゴソやっているのだった。そこを通るたびにその光景に惹きつけられた。でも1年ほど前からおじいさんの姿は見られなくなり、彼の宝物だったガラクタたちはいつしかまとめてビニールがかけられた。

ガラクタが好きだ。私はシブチンで洋服もアクセも化粧品もほとんど買わない。惜しみなくお金を出すのは洋書とガラクタだけ。動かなくなったゼンマイのはみ出てる時計、壊れたミシン台、どこの国のだかわからない錆だらけのコイン。そんなものを最近しきりに買い集めるようになった。コレクションだのアンティークだの、プレミアなんかじゃなくていい。むしろ無い方がいい。古くて忘れられたものはなぜか私を慰めてくれる。

ガラクタに囲まれていたおじいさんの幸福を羨ましく思う。好きなものに囲まれて、いつしか自分がそれに同化してしまえたらと思う。
プロフィール

胡舟

Author:胡舟
北海道オホーツクに在住し北の海のクラフトを作っています。

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