ALONE, ALONE AND ALONE

日野皓正さんを最初に知ったのはいつなのかはっきりしない。たぶん「シティコネクション」でブレイクしていたあたりかな。シティ~は79年だから高校生のときだ。
80年当時日野さんは超売れっ子でCMにも出演していた。カッコいい!!と思った。もちろん元々男前だけど、全身から発してくる強くて温かいオーラ、そしててらいのないオープンな雰囲気。ほんの小娘だったけど直感的に「いい男だなぁ」と感じた。今でも心からそう思っている。日野さん(私はさん付け以外では呼べない)はその音楽も人間性もビジュアルも、存在全てを尊敬しているアーティストだ。時々メディアでお見かけするたびに、いつもアグレッシブでビシッと芯が通っててファンキーでしかもオープンマインドで、本当に素敵な方なので嬉しくなる。このオーラってデザイナーの三宅一生さんにも共通してるように思う。(三宅さんも尊敬する人。)高校生だった頃から今にいたるまでまったくその印象はブレないし、ずっと大ファンの私もなかなかじゃん、と思う。
日野さんについて書き出すと賛辞が止まらない。
さて本題。昔父が一時ラジオ局に出向していた。ラジオ局内には古今東西世界中で発売されたあらゆるアルバムが揃ったライブラリーがあるそうで、そこからの持ち出しは一切厳禁。「借りてこられるのはエライヒトだけだ」と自慢するので、「じゃあ日野さんのアルバムを借りてきて」と頼んだ。翌日借りてきてくれたのが「ALONE, ALONE AND ALONE」と「INTO THE HEAVEN」。一日しか借りられないとの由で、急いでカセットにダビングした。そのカセットを20年以上宝物のように聴き続けた。この2枚、父にしてはグッドチョイスだったと今にして思う。(たまたま選んだんだろうけど。)
「Alone~」は日野さん初のリーダーアルバムで67年録音、日野さん25歳の時だ。タイトル曲ALONE, ALONE AND ALONEの最初の吹き出しのフレーズで、もう心を掴まれる。とてもナイーヴで美しく、しなやかだけど、強く骨っぽい。美しい旋律は日野さんの真骨頂。初リーダーアルバムの初オリジナル曲にして、日野さんの個性が凝縮した楽曲であり演奏だと思う。インテンポしてからのプレイもカッコいい。クールに抑えた中に、時折翔け上るようなフレーズを奏でるコルネット。ハートの熱さを感じさせる。唯一、大野雄二のピアノがちょっと線が細いかなという気がする。(2作目からPは鈴木宏昌に代わるので、大野がなぜファーストアルバムだけ参加してるのか経緯はわからない。大野は現在はルパン三世などの音楽を手がける有名アレンジャー。)
他の収録曲も全て気合の篭ったいい演奏だ。当時の日本人プレイヤーのレベルのなんと高かったことだろう!若い頃は「AUTUMN LEAVES」の演奏をうーんと思っていたけど、今になって良さがわかる。この名曲に挑む日本人の若者の「俺たちはこんな風にして演奏してやるぞ」という気概というか勢いというか、ひしひしと伝わってくる。お子様のうちはわからなかったのだ。

1990年のアルバム「BLUESTRUCK」で、日野さんは「ALONE, ALONE AND ALONE」を再録している。演奏の雰囲気も違うしバックメンバーもまるで違う。しかし、これまた名演奏なのだ。熟成した、というのかな。気負いの無い、ぐっと深みが増した演奏。日野さんにとってもおそらく特別な思いのある曲だと思う。それが再び録音されるまでに23年を経たのだった。
ずっと絶盤になっていた「ALONE-」は99年に再販されたので、「INTO THE HEAVEN」と共に購入した。製作中によく聴いている。